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まじゅつ

魔術

芥川 竜之介

雨夜我冒雨去拜访印度魔术师,他答应表演真正的魔法。但你想过吗,学会魔术的代价可能比魔法本身更可怕。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,235 字 · 15 页

青空文庫

僕の使う魔術には、種も仕掛もないのだから。」

私はこう言いながら、両手のカフスをまくり上げて、暖炉の中に燃え盛っている石炭を、無造作に掌の上へすくい上げました。私を囲んでいた友人たちは、これだけでも、もう荒胆を挫がれたのでしょう。皆顔を見合せながらうっかり側へ寄って火傷でもしては大変だと、気味悪るそうにしりごみさえし始めるのです。

そこで私の方はいよいよ落着き払って、その掌の上の石炭の火を、しばらく一同の眼の前へつきつけてから、今度はそれを勢いよく寄木細工の床へ撒き散らしました。その途端です、窓の外に降る雨の音を圧して、もう一つ変った雨の音が俄に床の上から起ったのは。と言うのはまっ赤な石炭の火が、私の掌を離れると同時に、無数の美しい金貨になって、雨のように床の上へこぼれ飛んだからなのです。

友人たちは皆夢でも見ているように、茫然と喝采するのさえも忘れていました。

「まずちょいとこんなものさ。」

私は得意の微笑を浮べながら、静にまた元の椅子に腰を下しました。

「こりゃ皆ほんとうの金貨かい。」

呆気にとられていた友人の一人が、ようやくこう私に尋ねたのは、それから五分ばかりたった後のことです。