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さかなのえさ
魚の餌
梅崎 春生
「改造」1953(昭和28)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,827 字 · 10 页
兄の方は、よりそってきた弟をかばうように、身体を動かして構えた。その兄の眼付きは、僕をたじろがせるほど烈しかった。
「餌をやろうか。え?」
さり気なく言ったつもりだが、あるいは兄弟はその語調のうちに、なにか底意を感じたのかも知れない。
「餌がないのだろう。いらないのか」
子供の傍の餌箱は空で、底には小量の泥がかさかさに乾いている。兄は警戒の色をますます深め、じっと僕をにらんでいる。にらむとこの子はやや眇目になるのだ。弟の方の顔はしだいにくずれて、今にも泣き出しそうな顔になった。しかし泣き出しはしなかった。眼をキラキラさせて、脣を噛みしめている。僕はしだいに自分のこんなバカな思い付きを後悔し始めていた。しかしこのままではひっこみがつかない。僕は少しいらだって来た。
「餌、欲しくないのか」
笑って見せようとしたが、笑い顔にならなかったかも知れない。僕は餌箱を眼の前につき出そうとした。その時突然、兄の方がいやにはっきりと答えた。
「いらん!」
そうか、と僕は言い、しかし俺はもう帰るし、どうせ餌は捨てるんだから、要るのなら置いてゆくよ、とまだ言い終らないうちに、