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なるとひちょう
鳴門秘帖
吉川 英治
03 木曾の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 页
手前は、啓之助様の召使なので、へい」
「ああ、同行してきた者ではないのか」といっているうちに、奥の目付屋敷の方から、森啓之助の姿がこっちへ向いて歩いてきた。
「誰じゃ、この方に密用があると申してまいった者は?」と啓之助、そこへ来て見廻すと一緒に、すぐと、門のかげにチラと見えたお米の姿に気づいたが、わざとそれを後廻しにして、組子にたずねた。
「ええ、啓之助様、その甲比丹の三次はここにおります。どうもまことにお久しぶりで」
「はて、そちは? ……いっこう覚えがないように思うが」
「こんな山の中だから、思いだせないのでございましょう。あなたもお船手組の森様、わっしも密貿易船の三次です。お互に水の上で顔を合せりゃ、ああ、あの時のあの野郎かと……」
「うむ、わかった、あの三次か」
「折り入って、お願いがあってまいりやした。誰か、お美しいお客様もあるところ、長いお邪魔はいたしませんが、ちょっと、しばらくお顔を貸していただきてえと存じますが」
啓之助は、下らぬ者を取り次いだ、組子の愚鈍を腹立たしく思ったが、何となく、脇の下へもたれこんでくるような三次の口ぶりを、強くはね返してもまずいかと考えたらしく、