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なるとひちょう

鳴門秘帖

吉川 英治

03 木曾の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,957 字 · 114 页

青空文庫

おいよ、四国屋のお内儀様を……そうだな、どこがよかろうか」

主の善七が考えていると、そのまに、四国屋のお久良と手代の新吉は、案内もなしに奥の廊下へバタバタと走りこんでしまった。

妙に思って、なんの気なしに善七が店先を見ると、今、お久良から話をきいていたばかりの三人組の侍。

「ここだろう」

「ここらしい……」と、あたりをジロジロねめ廻しながら、遠慮なく店へ寄ってきた。

ひとりは熊谷笠をかぶり、ひとりは総髪、そのうしろには、底光りのする眼をもった黒頭巾黒着の武士。

これはいうまでもなく、お十夜とほかふたりの者である。和田峠の中腹を下ってきた時、周馬と一角が、先へ遠く急いでゆく男女のうしろ姿をみとめて、あれこそ、お綱と万吉に相違ないとばかり、にわかに意気ごんで、足を早めて追いかけたのだ。

すると、追えば追うほど、いよいよ先の男女が、後もみずに逃げだす様子なので、初めの怪しみは、的確に、それと思いこむようになってしまった。

「駕のついたのはたしかにここだ」と周馬が会田屋の前で明言すると、お十夜と一角がズッと中をさし覗きながら、ゆるせよ、と声をかけて、すぐに埃をハタき笠と振分を投げだしそうにした。