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めいせつじじょでん

鳴雪自叙伝

内藤 鳴雪

在线阅读内藤 鳴雪《鳴雪自叙伝(めいせつじじょでん)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,693 字 · 377 页

青空文庫

海路は別に滞りもなく大阪へ着いて、それから東海道を東上した。勿論いずれも書生の身分だから日々徒歩と定め、よくよく足が疲れると荷馬の空鞍に乗った。その頃珍らしかったのは、三河地方の平坦な土地では、人が曳いて土石などを運ぶ、板で囲った小さな荷車に、旅客をも賃銭を取って乗せてたので、私どもも三人一緒にそれに乗った事がある。今日の如く、バネがないから、車輪から立つ砂埃は用捨なく、乗客を襲うので、これには随分閉口した。川口は幕府の時と違って船渡しの手当も充分であるし、また冬の季節でもあったから、別に川止めにも出会わず無事に東京へ着いた。この道中の大磯からであったと思うその頃東京ではもっぱら流行していた人力車というものがあったので、三人ながらそれに乗った。実に早いものだと驚いた事であった。

東京へ着した時はまだ藩の出張所は何とかいった、京橋あたりの旅店に設けられていた。そうして三田の藩邸は久松家の住わるる私有邸となっていた。私どもはまず藩の出張所へ到着を届けて、そこへ一、二泊させてもらった。その内従弟の中行は三田の慶応義塾へ入塾した。私と由井氏とは芝の新銭座の或る人の坐敷を借りて寓居した。