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あへんをのむびしょうねん

鴉片を喫む美少年

国枝 史郎

「オール読物」1931(昭和6)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,061 字 · 21 页

青空文庫

今の境遇では日本の国へ、いつ帰れるとも解らない。藩籍からも除かれたそうだし、何か国禁でも犯したかのように、幕府の有司などは誤解していると、君からの手紙にあったので、せっかく日本へ帰ったところで、面白いことがないばかりか、冷遇されるだろうから、帰国しようと思っていないのさ。

しかし一日として日本のことを、思わない日はないのだよ。勿論妻も子供もないから、君侯のことや朋輩のことや――わけても君、吉田惣蔵君のことを、何事につけても思い出すのだがね。

黄浦河の岸に楊柳の花が咲いて散って空に飜えり、旗亭や茶館や画舫などへ、鵞毛のように降りかかる季節、四五月の季節が来ようものなら、わけても日本がなつかしくなるよ。

楊柳の花! 楊柳の花!

友よ、友よ、楊柳の花のよさは、何と云ったらよいだろう!

詩人李白が詠ったっけ。――

楊花落尽子規啼。

聞道竜標過五渓。

我寄愁心与明月。

随風直到夜郎西。

詩人王維も詠ったっけ。――

花外江頭坐不帰。

水晶宮殿転霏微。

桃花細逐楊花落。

黄鳥時兼白鳥飛。

が、今は楊柳の花が、僕の心を感傷的にする、そういう季節ではないのだよ。しかし僕の語ろうとする「鴉片を喫む美少年」