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おうがい・あくたがわ・きくちのれきししょうせつ

鴎外・芥川・菊池の歴史小説

宮本 百合子

「古典研究」1940(昭和15)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,337 字 · 24 页

青空文庫

特に自身の生活態度に於ては封建的なものの一つとして世俗な力に従う傾向のあった鴎外がほかならぬこの道を、歴史小説に於て辿ったことも肯けるのである。

鴎外の歴史的題材を扱った作品の、略「栗山大膳」ぐらいまでを歴史小説と云い、「澀江抽斎」「伊沢蘭軒」などを事実小説とする斎藤茂吉氏の区分も、私たちには何となしぴったりしない。最後の二作は伝記であると思われる。小説という文字が使われなければならないとすれば、それは伝記小説と呼ばれてはいけないのだろうか。

芥川龍之介が、漱石に推賞されたのは「鼻」という歴史的な題材による作品であった。「羅生門」「地獄変」「戯作三昧」その他、芥川龍之介の作品には歴史的な人物を主人公としたり、古い物語のなかに描かれている人物をかりた作品が多い。

大体、大正初頭、鴎外が歴史小説に手を染めはじめた時分から数年間、日本の文学に歴史的な材料を扱った作品が多くあらわれた。そして、それが、各々の作家たちを新しい道に押し出し或は文学に初登場させたばかりでなく、それから後につづく十年の間にそれらの作家たちが時代の推移につれて激しく社会と文学とに揉みぬかれなければならなかった。