轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

こうのすにょうぼう

鴻ノ巣女房

矢田 津世子

「文芸」1941(昭和16)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,884 字 · 24 页

青空文庫

針の一本一本を唇でためした。そして、機械にかける前、糸を舐めるのに精をきらした。舐めると糸が切れないという「まじない」を故郷の年寄衆にきいていたからである。針の間からゆるやかに大巾の模様レースが流れ出してくる。白いこの流れに機械の騒音が吸いこまれて、ひとり静けさがここにばかり凝っているようである。視戌っているとしんしんとした静けさが心の奥底にまで沁みる。すると、心の奥底にもまた白い模様レースが流れはじめる。ぎんは、ぼけたように機械を忘れて立っていて、よく小突かれた。監督になってからも、この機械からは離れられなくて、ずっと掛持だった。

機械に引き添いながら、ぎんはいろいろな模様レースを心の中で織った。子供のころ見なれた山の端の茜雲や、青空にふんわりとかかった白い薄雲や、いつかの明方見たことのある遠い空の燃えるようなだんだら雲を次ぎつぎと織っていった。それから夏の雨上りの虹の橋や朝露のつぶつぶを光らせた浅緑の草むらを織ってみたいと思った。その草むらにとまっている玉虫や羽根のすけてみえるかげろうを織りこんでみたら、どんなに綺麗かと思う。そしてまた虹の橋に霧がかかったところや梢を鳴らす優しい風の音もレースに織ってみようと、胸をふくらませるのだった。