轻松读懂日语经典作品
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こうのすにょうぼう
鴻ノ巣女房
矢田 津世子
「文芸」1941(昭和16)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,884 字 · 24 页
ぎんが工場づとめをしている間に両親が次ぎつぎに死に、たった一人の兄は北海道へ渡って鉱山入りをしたまま消息を絶ってしまった。チブスで動きのとれなかったぎんは、とうとう親の死に目にも会えなかった。寺島捨吉と知り合ったのは、こうした不幸のあとだったのである。
その頃、工場には女工たちのために三棟の寄宿舎が出来ていた。外出しにくいので、しぜん行商人が入り込む。捨吉は小間物類一切から下駄草履のようなものまでつづらに詰めては商いに来る。色の浅黒い三白眼の、ちょっと小粋なところのある男だった。広島弁で面白いことを云っては笑わせる。自転車につづらをつけた捨吉の姿が通りに見え出すと、女工たちは窓から乗り出したり手を振ったりしてキイキイ声を張り上げる。なかなかの人気だった。
この捨吉が、ぎんへはこっそりと並ならぬ優しさを見せるのである。毛ピンやネットのようなものを負けてくれたりハイカラな文化草履を卸値で分けてくれたりする。ぎんの手足を綺麗だとほめて顔が火照るほど嬉しがらせたりした。
或る日、非番でぎんが寝転んでいるところへ、つづらの捨吉が入って来た。部屋の者が出はらっているのを見て、あんたにだけ聞いてもらいたい話がある、と声を低めて、身の上話をはじめた。