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こうのすにょうぼう

鴻ノ巣女房

矢田 津世子

「文芸」1941(昭和16)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,884 字 · 24 页

青空文庫

と張紙などして、からかったりした。

ぎんは器用なたちだったので、大抵の繕い物は自分の手でした。傘の張換えだの骨の折れなどを雑作なくなおした。それから鍋や薬鑵などのイカケもすれば、瀬戸物の毀れを接ぎ合せることも出来た。

主人夫婦はこうしたぎんの始末振りをひどく気に入っていた。非常時の折から物品愛護のよい手本だと賞めた。ぎんはニコニコ笑っていた。主人夫婦の言葉は、なんでも有難かった。ぎんにとっては主人夫婦はただただ無類の結構人だった。

旦那様のほうは中風の気味で臥せがちだったが、せっかちの口やかまし屋で、しょっちゅう小言ばかり云っていた。そのうえ手に負えない癇性で、畳に顔をこすりつけるほどにして調べてはササクレをいちいちつまみとらせたりする。奥様は信心深くて念珠を手から離したことがない。慈悲の心に篤く、申し分なく優しい人柄だったけれど、出入りの者たちは「けちんぼう」だと蔭口をきいていた。情をかけるにも口だけで、一向に喜捨をしたためしがない。奥様自身は、まことさえあれば仏様の御心に通じるものだからと云い慣わして、人へ恵むということをあまり喜ばない。お貰い物が殊のほか好きで、それへ熨斗紙を掛けかえたりしては他家への遣い物にしたり、あれこれとひとりで忙しがっている。