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がこせんにん

鵞湖仙人

国枝 史郎

「ポケット」1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,555 字 · 22 页

青空文庫

「天地人三才の筋からでござる」

「大概な者には解らぬ筈だが」

「なにさ、手相さえ心得て居れば、あんなことぐらいは誰にでも解る。……が、あれは何術でござるな?」

「さよう、あれは、十宮伝」

「南宗派乾流九重天、第一巻の其中に、矢張りあるのでござろうな?」由井正雪は鎌をかけた。

すると老人はジロリと見たが、

「さあ何うだかな、わしは知らぬ」俄に用心したものである。「それは然うと正雪殿、昨日は湖畔でお目にかかったな」

「え、それではご存じか」正雪ちょっとドキリとした。

「それに昨夜はご苦労だった。折竹探法、嘶馬探法、いろいろ忍術をおやりのようだが、とうとう諦めて帰られたな。どうやら葉迦流をお学びと見える、が、まだまだ少しお若い。あれでは固めは破れぬよ」

「畜生」と正雪は腹の中「爺め、何んでも知っていやがる」しかし彼は屈しなかった。

彼は一膝グイと進めた。

「が、流石のご老人も、幽霊船にはお困りのようだな」

「さて、そいつだ」と老人は、繃帯した右手を膝へ置いたが「余人ならぬ正雪殿だ、真実の所をお話しするが、仰せの通り、あれには参った」

「ご老人ほどの方術家にも、どうにもならぬと見えますな」