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がちょう

鵞鳥

幸田 露伴

「日本評論」1929(昭和14)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,335 字 · 23 页

青空文庫

それも製作技術の智慧からではあるが、丸太を組み、割竹を編み、紙を貼り、色を傅けて、インチキ大仏のその眼の孔から安房上総まで見ゆるほどなのを江戸に作ったことがある。そういう質の智慧のある人であるから、今ここにおいて行詰まるような意気地無しではなかった。先輩として助言した。

「君、なるほど火の芸術は厄介だ。しかしここに道はある。どうです、鵞鳥だからむずかしいので。蟾蜍と改題してはどんなものでしょう。昔から蟾蜍の鋳物は古い水滴などにもある。醜いものだが、雅はあるものだ。あれなら熔金の断れるおそれなどは少しも無くて済む。」

好意からの助言には相違無いが、若崎は侮辱されたように感じでもしたか、

「いやですナア蟾蜍は。やっぱり鵞鳥で苦みましょうヨ。」

と、悲しげにまた何だか怨みっぽく答えた。

「そんなに鵞鳥に貼くこともありますまい。」

「イヤ、君だってそうでしょうが、題は自然に出て来るもので、それと定まったら、もうわたしには棄てきれませぬ。逃げ道のために蝦蟇の術をつかうなんていう、忍術のようなことは私には出来ません。進み進んで、出来る、出来ない、成就不成就の紙一重の危い境に臨んで奮うのが芸術では無いでしょうか。