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つるはやみき

鶴は病みき

岡本 かの子

「文学界」1936(昭和11)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,495 字 · 53 页

青空文庫

□はさしものN市の大家産を傾け尽そうとして居るのですよ。好い奴ですが、どうも幼稚な野心家でね。文学だ、美術だ、でさらんぱらんになりそうですよ。」私「△さんの店の最中おいしいんですね。」麻川氏「あの△氏も最中ばかりつくってりゃ好いのに、われわれどもを崇拝始めたら商売道は危うしですな。」私「×さん、×××さん達、先刻まで居られましたね。」麻川氏「×は小説家志望ですがダンスがうまいですよ。鎌倉ホテルのダンス場で×にダンス習ったらどうですか。年がいかないからまだ彼は無邪気ですよ。」叔母さんが口を出した。「いやですよ。この人は波乗りがやっとって処ですからね、そんな身軽なこと出来やしませんよ。」おばさんはだから発声運動をさせようと、三味線を持って来て、明日から私に鶴亀の復習をさせようとして居ることを話して二人は応接室から出ようとすると麻川氏は改めて私を呼び留めた。そして大真面目に「あなたんとこへまだ随分沢山の人が東京から来るんでしょうな。およそ何人位まだ来る予定ですか。」私「それは判りません。」麻川氏「それらの人達がですな、一々僕を頭に置いて帰るんじゃあ、やり切れない……。