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つるはやみき
鶴は病みき
岡本 かの子
「文学界」1936(昭和11)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,495 字 · 53 页
」
暗い廊下を通り乍ら叔母さんは云った。「変な人ね、あの麻川さんて人は。」私「……。」叔母さん「何だって人の処へ来るお客の数を調べ上げたり気にしたりするんだろうね。」
部屋へ帰って来て床を敷き乍らも叔母さんは独言のように云っている。「どうも変だよ、あの人はまるで、うしろ暗い事でも持っているようだ。」などと。叔母さんは五十近くでなりふりなど古風で常識的だが、なまなかの若者より敏感なのだ。やがて叔母さんは襖をしめて従妹と向うの部屋で寝て仕舞った。私は昼寝をかなりしたし、叔母さんの言葉や、麻川氏の今さっきの言葉や態度も気になって寝られ無い。仕方なしに起きて机の上に両手を組み頭をのせ叔母さんの云った麻川さんのうしろ暗い事について考え込んだ。うしろ暗い事なんか誰でも持って居るのだ、それをあんなにも人に見せまい感づかれまいとする麻川氏の焦燥は、見て居てもこっちが辛い。お客はお互いの部屋のお互いっこなのだ。も一つの部屋のブルジョア息子達の部屋のお客こそ大したものだ。朝から晩まで誰かしら外部のものが詰めかけ、ハモニカ、合唱、角力、哄笑。それらは麻川氏の神経に触らなくて「種蒔く氏」