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わし
鷲
岡本 綺堂
岡本綺堂『鷲』。同一底本的分册已合并为一书。收入:麻畑の一夜、鰻に呪われた男、怪獣、兜、経帷子の秘密、くろん坊、深見夫人の死、雪女、鷲、マレー俳優の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,476 字 · 290 页
その板戸の隙間からのぞくと、まだ三十を越えまいかと思われる一人の若い僧が仏前で経を読んでいるらしく、炉には消えかかった柴の火が弱く燃えていた。
戸をたたいて案内を乞うと、僧は出て来た。叔父は行き暮らした旅商人であることを告げて、ちっとの間ここに休ませてくれまいかと頼むと、僧はこころよく承知して内へ招じ入れた。彼は炉の火を焚きそえて、湯を沸かして飲ませてくれた。
「この通りの山奥で、朝夕はずいぶん冷えます。それでもまだこの頃はよろしいが、十一月十二月には雪がなかなか深くなって、土地なれぬ人にはとても歩かれぬようになります。」
「雪はどのくらい積もります。」
「年によると、一丈も積もることがあります。」
「一丈……。」と、叔父もすこし驚かされた。まったく今頃だからいいが、冬にむかって迂濶にこんな山奥へ踏み込んだらば、飛んだ目に逢うところであったと、いよいよ自分の無謀を悔むような気になった。
「お前、ひもじゅうはござらぬか。」と、僧は言った。「なにしろ五穀の乏しい土地で、ここらでは麦を少しばかり食い、そのほかには蕎麦や木の実を食っておりますが、わたしの家には麦のたくわえはありませぬ。