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わし
鷲
岡本 綺堂
岡本綺堂『鷲』。同一底本的分册已合并为一书。收入:麻畑の一夜、鰻に呪われた男、怪獣、兜、経帷子の秘密、くろん坊、深見夫人の死、雪女、鷲、マレー俳優の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,476 字 · 290 页
「はい。」
母はなんにも知らないらしいので、又次郎は困った。知らぬが仏とは、まったくこの事である。その仏のような母にむかって、おまえの娘は乱心していると明らさまに言い聞かせるのは、余り残酷のような気がしてきたので、彼はすこしく言いしぶった。お豊にたずねられるままに、彼は江戸の噂などをして、結局肝腎の問題には触れないで立ち帰ることになった。
「角蔵にもし用がなかったら、今夜たずねてくるように言ってくれ、少し話して置きたいことがあるから。」と、又次郎は立ちぎわに言った。
「かしこまりました。」
「忙がしいところを、邪魔をしたな。」
出て行こうとする又次郎を追いかけて、お豊はささやいた。
「さっきも申上げました通り、大師さまのおみくじには凶というお告げがございましたから……。どなたにもお気をお付け遊ばして……。」
おみくじに偽りがなくば、ひとの事よりわが身のことである。おまえは自分のむすめが乱心しているのを知らないかと、又次郎は口の先まで出かかったが、やはり躊躇した。彼はただうなずいて別れた。
老巧の弥太郎のいう通り、さすがの荒鷲も青天の白昼には余りに姿を見せないで、多くは早暁か夕暮れに飛んでくる。