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マージャンさつじんじけん

麻雀殺人事件

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,337 字 · 33 页

青空文庫

郊外住宅も案外涼しくないものと見える。

帆村探偵は、ペーブメントの道を横に切れて、大きいビルディングとビルディングの間の狭い路を入ると、突当りに「麻雀」と書いた美しい電気看板のあがっている家の扉を押して入った。彼は暑さにもめげず大変いい機嫌だった。というのもその前夜で、永らくひっかかっていた某大事件を片付けてしまったその肩の軽さと、久しぶりの非番を味う喜びとで、子供のように、はしゃいでいた。三年こっち病みつきの麻雀を、今夜は思う存分闘わしてみようと思った。

「あ、こりゃ大変だ」

と帆村は、麻雀倶楽部の競技室のカーテンを開くと、同時に叫んだ。この暑いのに、文字通り立錐の余地のない満員だった。

「いらっしゃいまし。今日は土曜の晩なもんで、こう混んでんのよ、センセーッ」

麻雀ガールの豊ちゃんが、鼻の頭に噴きだした玉のような汗を、クシャクシャになった手帛で拭き拭き、そう云った。

「先生――は、よして貰いたいね、豊ちゃん。あの星尾信一郎氏は本当の先生なのに、あいつのことは、シンチャン、シンチャーンってね……」

「いけないワ先生」と豊ちゃんは、真紅に耳朶を染めながらそれを抑えた。