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たそがれのこくはく
黄昏の告白
浜尾 四郎
「新青年」博文館、1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,453 字 · 41 页
自分の敗北を認めた時、米倉は死ぬかとすら思われた。しかし彼は奮起した。奮起して彼はいっそうその芸術に精進して、ついには大川を凌ぐ盛名を博するに至ったのである。
大川はいまや恋の勝利者ではあるが、芸術上の敗北者であった。と少くも世人には思われた。男子は、ことに大川のような男は、恋のみに生き得るものではない。
昨年一杯彼の沈黙は果して何を示しているか。彼はついに力つきたのか。あるいはまさに再起せんとして一時の沈黙を忍んでいるのか。世人は深き興味をもってこれを眺めていたのである。かかる事情のもとに起った大川竜太郎の自殺事件である。文壇のある人々がこの点に彼の自殺の原因を見出したのも、決して無理とはいえなかった。
けれども、これだけが唯一の原因だとも見られぬ事情があった。さきに述べた大川の家における惨劇を原因として――少くも原因の一つとして見逃すことは、正しくはあるまい。
昨年の十月二十日の諸新聞の夕刊はこぞって大々的にその事件を報じている。そのうちの一つを次に掲げてみよう。
○強盗今暁大川竜太郎氏方を襲う
――妻酒井蓉子(元女優)を惨殺して
自分も大川氏に射殺さる――