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くろてぐみ

黒手組

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,978 字 · 36 页

青空文庫

牧田は、闇のことで見つかる心配はなかったけれど、なるべく樹蔭を伝う様にして、五六間の間隔でわしのあとからついて来ました。御承知の通り一本松のまわりは一帯の灌木林で、どこに賊が隠れているやら判らぬので、可也気味が悪い。が、わしはじっと辛抱してそこに立っていました。さあ三十分も待ったでしょうかな。牧田、お前はあの間どうしていたっけかなあ」

「はあ、御主人の所から十間位もありましたかと思いますが、繁みの中に腹這いになって、ピストルの引金に指をかけて、じっと御主人の懐中電燈の光を見詰めて居りました。随分長うございました。私は二三時間も待った様な気がいたします」

「で、賊はどの方角から参りました」

明智が熱心に訊ねました。彼は少からず興奮している様子です。といいますのは、ソラ、例の頭の毛をモジャモジャと指でかき廻す癖が始ったので解ります。

「賊は原っぱの方から来た様です。つまり我々が通って行った路とは反対の側から現れたのです」

「どんな風をしていました」

「よくは判らなかったが、何でも真黒な着物を着ていた様です。頭から足の先まで真黒で、ただ顔の一部分丈が、闇の中にほの白く見えていました。