轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
シーせんせいへのてがみ
C先生への手紙
宮本 百合子
「年刊多喜二・百合子研究 第2集」多喜二・百合子研究会編、河出書房、1955(昭和30)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,519 字 · 60 页
真個に足を地につけて、生き物として生き始めたとでも申しましょうか。今までの私は、生きると云う事を生きて来たのだと申さずには居られません。
概念と、只、自分のみの築き上げた象牙の塔に立て籠って、ちょいちょい外を覗きながら感動して居りました。従って、私は何に感動して居るのか、又するべき筈だかと云う事、又その感動の種類は大抵分って居りました。ところが、人間が活きて動いて居る世の中はなかなか其那、整然たるものでもなければ、又其程、明るいものでもございません。
人と人と鼻を突き合わせて見ると、何と云う人臭さが分る事でございましょう。
人間の醜さ、人間の有難さ、其は只、彼等の仲間である人間のみが知る事を得ます。
頭を下げても下げても、下げ切れない程、あらたかな人の裡には、憎んでも憎み切れない或物が倶に生きて居ります。
苦笑するような心持は、十や十一の子供には分らない心持ではございますまいか。
丁度、雨にそぼぬれた獣物が、一つところにじっと団り合って、お互の毛の臭い、水蒸気に混って漂う息の臭いを嗅ぎ合うような親密さ、その直接な――種々な虚飾や、浅薄な仮面をかなぐり捨てて、持って生れた顔と顔とで向い合う心持は、私の今まで知らなかった、其れで居て知らなければならない事だったのでございます。