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シーせんせいへのてがみ
C先生への手紙
宮本 百合子
「年刊多喜二・百合子研究 第2集」多喜二・百合子研究会編、河出書房、1955(昭和30)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,519 字 · 60 页
其と同時に、此の騒音の最中から、何等の諧調を求めて、微かながら認め得た一筋の音律を、急がずうまず辿って行く、僅かながら、高く澄んだ金属性の調音も亦、天の果から果へと伝って参ります。
日本にも馬鹿は居ります。アメリカにも大馬鹿が居ります。
粛かに心を潜めて思う真心の価値は、其を表現する言葉の差で違うべきものではございますまい。
誰も、我が国、我国と怒鳴りながら、大汗を掻いて騒ぎ立てないでも好ろしゅうございましょう。又誰も、「彼国」彼の国と指差しながら、周章ふためいて、喚きながら馳けずり廻らないでも好いのではございますまいか。
矢鱈に興奮許りしても、人間の魂が浄められるものでもございますまい。
人間を創る者は人間でございます。創った人間を量る者も亦、人間でございます。
心が、真実に豊かでありとうございます。その悠久な真実さが落付いて人間の種々相を観て慾しゅうございます。
――○――
人が、物を観る時に、唯一不二な心に成って、その対象に対すると云う事は大切でございましょう。けれども此は、没我と申せましょうか。元より無我と云う字の解釈にも依りますが、字書通り、我見なきこと、我意なきこと、我を忘れて事をなすと致しましても、結局「我」