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シーせんせいへのてがみ
C先生への手紙
宮本 百合子
「年刊多喜二・百合子研究 第2集」多喜二・百合子研究会編、河出書房、1955(昭和30)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,519 字 · 60 页
しなしなと微風に撓む帽子飾の陰から房毛をのぞかせて、笑いながら扇を上げる女性の媚態も見られます。
けれども此村は只其丈の単純さではございません。女達が華やかに笑いさざめいて行き交う街道の一重彼方には、まるで忘られたような、祖先のインディアンが、黒い着物に包まれて、森の中に暮して居ります。「女王」のお靴を磨きお髪あげをする黒坊の群も居ります。るろうの伊太利人は、バンジョーを胸から提げて道傍に立ちます。此の細長い、戸数の僅かな村でありながら、其の木の陰や森の彼方には、種々雑多な人種が、各自の力限りの生活を営んで居るのでございます。
此頃は殆ど毎日のように問題となって居る黒白人種の争闘は、心を苦しめます。今度の大戦で、欧州に出征した黒人は、楽しんで還った故国に非常な失望と、憤懣とを感じて居りますでしょう。独逸人は不正な、人類、人道主義の敵であるから殺せと命じられて来た彼等は、帰って来た土地で、同様の不正と、逆徳とを発見致します。彼等の行為が不正であると云うが故に独逸人は懲罰として死を与えられた。其だのに何故自分等は、全く同様の不正の下に、沈黙を守って屈従して居なければならないのか? 独逸人に向ってのみ人道主義は説かれるべきなのだろうか? 相当の頭を持った者は皆、皮肉な、一面から云うと、デスペレートな気分で此等