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ディーざかのさつじんじけん
D坂の殺人事件
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年1月増刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,072 字 · 44 页
と私が囁くと、彼は即座に答えた。
「本泥坊でしょう。どうも変ですね。僕も此処へ入って来た時から、見ていたんですよ。これで四人目ですね」
「君が来てからまだ三十分にもなりませんが、三十分に四人も、少しおかしいですね。僕は君の来る前からあすこを見ていたんですよ。一時間程前にね、あの障子があるでしょう。あれの格子の様になった所が、閉るのを見たんですが、それからずっと注意していたのです」
「家の人が出て行ったのじゃないのですか」
「それが、あの障子は一度も開かなかったのですよ。出て行ったとすれば裏口からでしょうが、……三十分も人がいないなんて確かに変ですよ。どうです。行って見ようじゃありませんか」
「そうですね。家の中に別状ないとしても、外で何かあったのかも知れませんからね」
私はこれが犯罪事件ででもあって呉れれば面白いと思いながらカフェを出た。明智とても同じ思いに違いなかった。彼も少からず興奮しているのだ。
古本屋はよくある型で、店全体土間になっていて、正面と左右に天井まで届く様な本棚を取付け、その腰の所が本を並べる為の台になっている。土間の中央には、島の様に、これも本を並べたり積上げたりする為の、長方形の台が置いてある。