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ディーざかのさつじんじけん
D坂の殺人事件
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年1月増刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,072 字 · 44 页
一番いい探偵法は、心理的に人の心の奥底を見抜くことです。だが、これは探偵者自身の能力の問題ですがね。兎も角、僕は今度はそういう方面に重きを置いてやって見ましたよ。
最初僕の注意を惹いたのは、古本屋の細君の身体中にある生傷のあったことです。それから間もなく、僕は蕎麦屋の細君の身体にも同じ様な生傷があることを聞込みました。これは君も知っているでしょう。併し、彼女等の夫は、そんな乱暴者でもなさそうです。古本屋にしても蕎麦屋にしても、おとなし相な、物分りのいい男なんですからね。僕は何となく、そこにある秘密が伏在しているのではないかと疑わないではいられなかったのです。で、僕は先ず古本屋の主人を捉えて、彼の口からその秘密を探り出そうとしました。僕が死んだ細君の知合だというので、彼もいくらか気を許していましたから、それは比較的楽に行きました。そして、ある変な事実を聞出すことが出来たのです。ところが、今度は蕎麦屋の主人ですが、彼は、ああ見えても却々しっかりした男ですから、探り出すのに可成骨が折れましたよ。でも、僕はある方法によって、うまく成功したのです。
君は、心理学上の聯想診断法が、犯罪捜査の方面にも利用され始めたのを知っているでしょう。