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ヒューマン ロスト
HUMAN LOST
「新潮」1937(昭和12)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,769 字 · 24 页
私は、はじめの日、腹から感謝して泣いてしまった。新入の患者あるごとに、ちくおんき、高田浩吉、はじめる如し。
一、事務所のほうからは、決して保証人へ来いと電話せぬ。むこうのきびしく、さいそくせぬうちは、永遠に黙している。たいてい、二年、三年放し飼い。みんな、出ること許り考えている。
一、外部との通信、全部没収。
一、見舞い絶対に謝絶、若しくは時間定めて看守立ち合い。
一、その他、たくさんある。思い出し次第、書きつづける。忘れねばこそ、思い出さずそろ、か。(この日、退院の約束、断腸のことどもあり、自動車の音、三十も、四十も、はては、飛行機の爆音、牛車、自転車のきしりにさえ胸やぶれる思い。)
「出してくれ!」「やかまし!」どしんのもの音ありて、秋の日あえなく暮れむとす。
二十六日。
「金魚も、ただ飼い放ち在るだけでは、月余の命、保たず。」(その二。)
昨日、約束の迎え来らず。ありがとう。けさ、おもむろに鉛筆執った。愛している、という。けれども、小市民四十歳の者は、われらを愛する術を知っていない。愛し得ぬのだ。金魚へ「ふ」だ。愛していないと、言い切り得る。
夫を失いし或る妻の呟き、「夜のつらさは、ごまかせるけれども、夜あけが――。