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“しきけんはつどう”をかかざるのき

“指揮権発動”を書かざるの記

犬養 健

「文藝春秋」文藝春秋新社、1960(昭和35)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,319 字 · 19 页

青空文庫

もちろん新しい原稿を書くこともできないし、隠すこともできない。娘は娘で、私の病中執筆には大反対で、S君にもとうに一本釘を打ってある。まったく金縛の態である。

ここで話は再び本筋に戻るが、以上のような次第で、こんなに来客がつぎつぎに相続く療養生活ではこっちの身体が続かない。「面会謝絶」という主治医の貼り札を戸口に出してもいっこう無駄である。何とかしてこのマスコミの波状攻撃に終止符を打たなければならない。かれこれするうちに三月に入って、病院の中庭のあちこちにも青草が芽生え、どうやら余寒も去ったところで、私は雛の節句の日にやっと退院した。U君はさっそく引っ越したばかりの私の新居を訪ねてくれた。ところが、U君は早くもその日のうちにまたまた奇々怪々な出来事にぶつかっているのである。というのは、この日U君が出社してみると、編集部の取り次ぎ嬢が待ち構えていたように飛び出して来て、

「今日は妙な電話がかかって来ました」

と言う。よく聞いてみると、その朝編集部へ変な電話がかかって来て、名前も名乗らずに、

「犬養の原稿がそちらにもう届いているはずだが、あの中には一カ所事実に相違した点がある。