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“しきけんはつどう”をかかざるのき
“指揮権発動”を書かざるの記
犬養 健
「文藝春秋」文藝春秋新社、1960(昭和35)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,319 字 · 19 页
「週刊女性という雑誌で大野伴睦先生の文章を拝見しました。あなたが指揮権発動のことで永い間ひとりで忍耐しておられる心持を今さら尊いと思いました」
と書いてよこした。私は突然のこととて意味の分らぬままにその週刊誌を本屋から取りよせて読んでみると、なるほど大野副総裁が歯切れのいいハッパをかけている。
「いかにも犬養はそういう原稿を書いているだろう。また、書くのが当然だ。しかし健さんのことだから、おそらく死ぬまでは発表せんだろう。その点が俺にははなはだ物足りんのだ。俺だったらサッサと公表するがな。まことに傍で見ていて歯がゆい限りだ」
と、こんな調子である。私には大野老のヤキモキしている心事が目に見えるようであった。しかし、同時に私はその一見乱暴に見えるような言動の裏に、私に対する温かい侠気のみなぎっているのをはっきり感じた。そして昔ながらの変らぬ友情をありがたいと思った。
このことがあってからしばらくの間はまず格別の出来事も起らなかったが、今年に入るとこの問題はさらに一躍してマスコミの寵児になった形であった。というのは、最近週刊読売に記事が出て、
「犬養は指揮権の真相を原稿に書いたが、とどのつまり、口止め料として莫大な金を受け取った。