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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

かれの胸はふるえかれの口元は悲痛と悔恨にゆるみ、そうしてかれの目から大粒の涙がこぼれた。

かれは阪井巌である。

汽車が見えなくなったときかれはようやくさくをはなれて長い溜め息をついた。それからじっと大通りの方を見やった。そこには学校の友達が波のくずれるごとく、帰りゆく、阪井は顔をたれてしずかに歩いた。

とだれかの声がした。

「生蕃がいる」

「阪井のやつがきている」

少年達の目は一度に阪井にそそがれた、阪井は棒のごとく立ちすくんだ。

「やい生蕃」

まっさきにつめよったのはライオンであった。

「やい」

阪井はだまっている。

「きさまはなにしにきた」

「久保井先生に用事があってきたよ」と阪井はやはり顔もあげずにいった。

「きさまは久保井先生を学校からおいだしたんじゃないか、どの面さげてやってきたんだ」

「…………」

「おい、犬でも畜生でも恩は知ってるよ、おれはずいぶん不良だが校長先生の恩だけは知ってるんだ、きさまは先生をおいだした、犬畜生にもおとるやつだ」

「…………」

「きさまのようなやつはくたばってしまやがれ、きさまのようなやつがいるのは浦和の恥辱だぞ、どうだ諸君、こいつを打ち殺そうか」