轻松读懂日语经典作品
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ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて
佐藤 紅緑
「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页
右も桜左も桜、上も桜下も桜、天地は桜の花にうずもれて白一白、落英繽紛として顔に冷たい。
「ああきれいなところだなあ」
こう思うとたんにしずかに馬蹄の音がどこからとなくきこえる。
「ぱかぱかぱかぱか」
煙のごとくかすむ花の薄絹を透して人馬の行列が見える。にしきのみ旗、にしきのみ輿! その前後をまもるよろい武者! さながらにしき絵のよう。
行列は花の木の間を縫うて薄絹の中から、そろりそろりと現われてくる。
「下に座って下に座って」
声が聞こえるのでわきを見るとひとりの白髪の老翁が大地にひざまずいている。
「おじいさんこれはなんの行列ですか」
こうたずねるとおじいさんは千三の顔をじっと眺めた、それは紙幣で見たことのある武内宿禰に似た顔であった。
「あれはな、後村上天皇がいま行幸になったところだ」
「ああそれじゃここは?」
「吉野だ」
「どうしてここへいらっしったのです」
じいさんは千三をじろりと見やったがその目から涙がぼろぼろこぼれた。一円紙幣がぬれては困ると千三は思った。
「逆臣尊氏に攻められて、天が下御衣の御袖乾く間も在さぬのじゃ」
「それでは……これが……本当の……」