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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

とチビ公はいった、安場は答えなかった、ざわざわと枯れ草が風に鳴った。

「おれの歌よりもなあ青木」と安場はいった。「おまえのらっぱの方が尊いぞ」

「そうかなあ」

「進軍のらっぱだ」

「うむ」

「いさましいらっぱだ、ふけッ大いにふけ、ふいてふいてふきまくれ」

ひゅうひゅう風がふくので声が散ってしまった。

幸福の神はいつまでも青木一家にしぶい顔を見せなかった、伯父さんとチビ公の勉強によって一家は次第に回復した。チビ公の母は病気がなおってから店のすみにわずかばかりの雑穀を並べた、黙々先生はまっさきになって知人朋友を勧誘したので、雑穀は見る見る売れだした。生蕃親子がこの地を去ってからもはやチビ公を迫害するものはない、店はますます繁昌し、大した収入がなくとも不自由なく暮らせるようになった。

安場は日曜ごとに浦和へきた、そうして千三にキャッチボールを教えたりした、元来黙々塾に通学するものはすべて貧乏人の子で、でっち、小僧、工場通いの息子、中には大工や左官の内弟子もあった。かれらはみんな仲よしであった、ハイカラな制服制帽を着ることができぬので、大抵和服にはかまをはいていた。