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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

と安場がにこにこしてきた。

「そろそろいい時分だよ」

「なにが?」

「ラッキーセブンだ」

「ぼくにラッキーはない、だめだ」

「ばかいえ、きみはたしかに勝てるのに勝たずにいるんだ」

「どうして?」

「きみは大事なことをわすれてる」

「なにを? 大事なことを?」

「うむ、先生に教わったことを」

千三はじっと考えた。

「あッ、へそか」

「人間がへそをわすれたら、もうおしまいだ」

「そうか、うむ、ああへそだ、はッはッはッ」

と千三はわらった。

「わかったか」

安場はぐっと千三のへそを押した。ふしぎに千三は頭がすッと軽くなった、胸につかえたもじゃもじゃしたものが煙のごとく消えて、どっしりと腹の底に重みができた。

「見ろ! あの手塚てえやつはいまに大変なミスをやるぞ、見物人に賞められることばかりを考えてるからね」

「やる! きっとやる」と千三はいった。このとき五大洲は安打して一塁をとった、つぎのクラモウはバントした、手塚はそれを取って二塁へ投げようか一塁へ投げようかと疑惧してるうちに双方を生かしてしまった。三番は千三である。

「ぷうぷうぽうぽう」とらっぱが鳴った。

「青木! 青木! フレイフレイ」