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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

して奉公人共に後ろ指をさされることになると、あの子の名誉にもかかわる、さりとてうちすておくこともできない。

わが子を叱りたくはないが、叱らねば救うことはできない、母は思案に暮れた。かの女はとうとう光一の室へいった。

「光一、おまえに相談があるんだが……」

「なんですか、なにかうまいものでもぼくにくれるの?」と光一は微笑していった。

「それどころじゃないよ、文子のようすがこのごろなんだか変だとおまえは思わない?」

「変ですな」

「そうだろう」

「ほっぺたがますますふくれる」

「そんなことじゃない、学校の帰りが大変におそい」

「居残りの稽古があるんです」

「でもね、お金使いがあらいよ」

「本を買うんです、いまが一番本を買いたい年なんです、ぼくにも少しください」

「おまえのことをいってるんじゃないよ、本当に文子が本を買うためにお金がいるんだろうか」

「そうです」

「でも毎晩なんだか手紙のようなものを書いてるよ」

「作文の稽古ですよ、あいつなかなか文章がうまいんです」

「このあいだ男の子と歩いているのをお松が見たそうだよ」

「男の子とだって歩きますよ、ぼくも女の子と道づれになることがある、隣の珠子さんが犬に追われたとき、ぼくはおんぶして帰ってきた」