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ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて
佐藤 紅緑
「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页
このとき手塚がみなに押されて座席をはなれた。会衆は波の如く動いた。手塚は器用で頓知がある、人まねがじょうずで、活動の弁士の仮声はもっとも得意とするところであり、かつ毎月多くの雑誌を読んであらゆる流行語を知っている。かれは新しい制服を着てなめらかに光る靴をはいていた。
拍手に送られてかれは演壇に立った。
「私は英雄を非認するためにこの演壇に上がりました、私は歴史のあらゆる頁から英雄を抹殺したいと思います。英雄なる文字は畢竟奴隷なる文字の対象であります、私共の祖先は英雄の奴隷であったのです、個人の権利を侵掠して自己の征服欲を満足させたものは英雄であります、もし今日……デモクラシーの今日においてなお英雄を崇拝するものあらばそれは個人の生存権利を知らない旧い頭の持ち主であります」
一気にすらすらといいだした流暢な弁舌はさわやかに美しい、彼の目はいかにも聡明に輝き、その頬は得意の心状と共にあからんだ。
「よくしゃべる奴だ」と彰義隊が叫んだ。
「しッしッ」と制する声。
手塚は会衆を満足そうに見おろしてつづけた。
「一将功成りて万骨枯るという古言があります、ひとりの殿様がお城をきずくに、万人の百姓を苦しめました、しかも殿様は英雄とうたわれ百姓は草莽の間につかれて死にます、清盛、頼朝、太閤、家康、諸君はかれらを英雄なりというでしょ