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ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて
佐藤 紅緑
「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页
チビ公はびっくりしてものがいえなかった、かれはたった一年のあいだに友達の学問が非常に進歩し、いまではとてもおよびもつかぬほど自分がおくれたことを知った。幾何や物理や英語、それだけでもいまでは異国人のように差異ができた、こうして自分が豆腐屋になりだんだんこの人達とちがった世界へ墜落してゆくのだと思った。
「ねえきみ、ぼくらにはなんの話だかわからないね」
かれは隣席の豊松という少年にこうささやいた。豊松は八百屋の子で小学校を卒業するまでに二度ほど落第した、チビ公よりは二つも年上だが、そのかわりに身体が大きく力が強い、そのわりあいに喧嘩が弱く、よく生蕃になぐられては目のまん中から大粒の涙をぽろりと一粒こぼしたものだ、今日集まった人々の中で中学校へもいかずに家業においつかわれているものは豊公とチビ公の二人だけであった、かれは学問やなにかの話よりも昔の友達がみな制服を着てるのに自分だけが和服でいるのがはずかしかった。
「あの人達は学者になるんだよ、おれ達とはちがうんだ」とかれはいった。
「そうだね、おれ達はなんになろうたって出来やしない」とチビ公がいった。
「金持ちはいいなあ」