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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

おそらく当夜の会場で千三ほど深い注意をもって光一の演説を聴いていたものはなかったろう。

一方において手塚はほっと息をついた。救いの船がきたのである。師範の野淵をやっつけてくれるだろう。

「ぼくは演説がへたですからよくしゃべれません」

いかにもおずおずした調子でしかも低い活気のない声で光一はいった。

「へたなやつだなあ」と千三は肚の中でいった。

「ふだんにいくらいばっても晴れの場所では物がいえないだろう、へそに力がないからだ」

会衆もまた光一が案外へたなのに失望した。

「しかしぼくは野淵君の説に賛成することはできません、野淵君は英雄と花とを比較して美文を並べたがそれはカアライルの焼きなおしにすぎません、いかにも英雄は必要です、だが野淵君のいうような英雄は全然不必要です、いかんとなれば昔の英雄は国利民福を主とせずして自己の利害のみを主としたからです、豊臣が諸侯を征した。家康が旧恩ある太閤の遺孤を滅ぼして政権を私した、そうして皇室の大権をぬすむこと三百余年、清盛にしろ頼朝にしろ、ことごとくそうである、かれらは正義によらざる英雄である、不正の英雄は抜山倒海の勇あるももって尊敬することはできません、武王は紂王を討った、それは紂王が不正だからである、ナポレオンは欧州を略した、それは国民の希望であったからである、木曽義仲を