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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

「そうなるかもしれない、きみの方で阪井にかけあってなんとかしてもらうんだね」

チビ公はがっかりして警察をでた、それからその足でさしいれ屋へゆき、売りだめから七十五銭をだしていった。

「どうかよろしくお願いします」

「覚平さんだったね」とさしいれ屋の亭主がいった。

「はあ」

「覚平さんのさしいれはすんでるよ」

「三度分の弁当ですよ」

「ああすんでる」

「だれがしてくれたのです」

「だれだかわからないがすんでる、五十銭の弁当が三本」

「へえ、それじゃちり紙を一つ……」

「ちり紙とてぬぐいと、毛布二枚とまくらと……それもすんでる」

「それも?」とチビ公はあきれて、「どなたがやってくだすったのですか」

「それもいえない、いわずにいてくれというんだから」

「じゃさしいれするものはほかになんでしょう」

「その人がみんなやってくれるからいいだろう」

チビ公はあっけにとられて言葉がでなかった、親類とてほかにはなし、友達はあるだろうが、しかし匿名にしてさしいれするのでは、ふだんにさほど懇意にしている人でないかもしれぬ、自分では想像もできぬが、母にきいたら思いあたることもあるだろう、こう思ってかれはそこをでた、家へ帰ると母もすでに帰っていた。