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ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて
佐藤 紅緑
「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页
覚平は人々とともに消火につとめた、さわぎのうちに夜がほのぼのと明けた。
町は鼎のわくがごとく流言蜚語が起こった。不正工事の問題が起こりつつあり、大疑獄がここに開かれんとする矢先に役場に放火をしたものがあるということは何人といえども疑わずにいられない。甲はこういう。
「これは同志会すなわち役場派の者が証拠を堙滅させるために放火したのである」
乙はこういう。
「役場反対派すなわち立憲党のやつらが役場を疑わせるために故意に放火したのだ」
色眼鏡をもってみるといずれも道理のように思える。だが多数の人はこういった。
「猛太父子が一命を投げだして消火につとめた処をもってみると、役場派が放火したのではなかろう」
こういって人々は猛太が浦和町のためにめざましい働きをしたことを口をきわめて称讃した、それと同時に巌の功労に対する称讃も八方から起こった。
半死半生のまま病院へ運ばれたまでは意識していたがその後のことは巌はなんにも知らなかった。かれが病院の一室に目がさめたとき、全身も顔も繃帯されているのに気がついた。
「目がさめて?」
母の声が枕元に聞こえた、同時にやさしい母の目がはっきりと見えた、母の顔はあおざめていた。