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あとがき(『みやもとゆりこせんしゅう』だいじゅうごかん)
あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)
宮本 百合子
「宮本百合子選集 第十五巻」安芸書房、1949(昭和24)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,335 字 · 7 页
軍部の煽動にのって若い女性が、明日にかくされている生活の破滅に向ってヒロイズムでごまかされないように、戦争的美名にかくされた資本主義の搾取の現実を見とおすように、荒くれたかぶった世間の気風のうちに、ひとすじの人間らしさと、その発展のための努力を失うまいとしているけなげな女性たちの心の友であろうとして、この集におさめられている文章はかかれた。
そういう面からみれば、これらの文章は、きょうのものではない。けれども、わたしたちがきょうのこの紛糾した苦しい矛盾をしのいで、将来によりましな社会をうみ出してゆこうとする気力と行動とを失わないでいるのは、何の魔力によってだろう。苦しみながら、ときには涙も出ない思いをかみしめながら、それでもなおわたしたちの頸すじは明日の希望に向ってもたげられている。それは、決してわたしたち女性がおろかな生物だからではない。生の根源というものは、どんな歴史の現実に深く根をおろしているものであるかということの証拠であると思う。小船は、一つ一つの波にはゆられているが大局からみればちゃんと一定の方向で波全体を漕ぎわけてゆく。そのようにわたしたちは、起伏する社会現象をはげしく身にうけながら、そこからさまざまの感想と批判と疑問とをとり出しつつ、人間らしい人生を求める航路そのものを放棄してはいない。