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あなたもわたしも

あなたも私も

久生 十蘭

「毎日新聞」1954(昭和29)年10月29日~1955(昭和30)年3月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,405 字 · 263 页

青空文庫

この間のビキニのような新型ウラニウム爆弾になって、どこかの国に死の灰を降らせるかもしれないことを承知しながら、あなたが苗木の谷の鉱業権を、外国に売り渡すだろうとは思わない……坂田君もそう信じています」

庭にむいた明るい書斎に、浜田と叔母の由良ふみ子と有江老人が掛けていた。

由良ふみ子はタフタの黒っぽいアフタヌンを着て、れいの賢夫人の風格で、ひとり離れた椅子に、しずまっていた。

「おばさま、ごぶさたして……」

「ごぶさたはお互さまだけど、あなた、このごろ役所に勤めているんだって? モデルなんかよりそのほうがマトモよ。暇もないだろうが、気がむいたら、遊びにくるといいわ」

「夏にでもなったら、また、お留守番にあがりますわ」

秋川がサト子を有江老人に紹介した。

「お孫さんのサト子さんです」

サト子がそばへ行っておじぎをした。

「いつか、電報をいただきましたが、ご承知のようなわけで、お目にかかれなくて……」

有江老人は、わかってるわかってると、うるさそうにうなずくと、モジャモジャの毛虫眉の下から落窪んだ小さな目を光らせながら、

「ファザーもマザーも亡くなって、ひとりでいるそうだな。