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あなたもわたしも

あなたも私も

久生 十蘭

「毎日新聞」1954(昭和29)年10月29日~1955(昭和30)年3月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,405 字 · 263 页

青空文庫

二十一二というところか。男にしては、すこし色が白すぎる。ぽってりと肉のついた、おちょぼ口をし、かわいいくらいの青年だ。遠目に見たところでは、中村錦之助の兄の芝雀に、いくらか似ている。

おとなりは山本という実業家の別荘だが、こんな青年がいるとは聞いていない。たぶん夏の間借りの客なのだろうが、日焼していないのが、おかしい。

やっと、思いあたった……

「叔母が言っていた、あのひとなんだわ」

近くの結核療養所にいるすごい美青年が、療後の足ならしに、ときどき遊びにくると、自慢らしく言っていた。

「夏がすんだって、面白いことは、あるにはあるのよ」

と思わせぶりなことを言っていたのは、このひとのことだったのにちがいない。

さぐりを入れてみる。

「おとなりの……方ですの」

青年は肩をすぼめるようにして、首をふった。

模範的な撫で肩で、ポロ・シャツの袖付の線が、へんなところまでさがっている。

「ご近所の方なのね」

療養所にいらっしゃる方、とはたずねなかったが、すなおに、青年は、はァとうなずいた。

「叔母が留守のことを知っていたので、おとなりへ遊びにいらしたというわけ?」

「ええ、ぶらぶら……」