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あのころ
あのころ
上村 松園
――幼ものがたり――
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,743 字 · 10 页
でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)絵がすきで、同じ絵を一日中眺めていたり、それを模写したりしたもので――小学校へ入って間もないころのことですから、ずいぶんとませていた訳です。
字体も大きく、和綴じの本で、※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)絵もなかなか鮮明でしたからお手本には上々でした。
北斎の絵は非常に動きのある力強い絵で、子供心にも、
「上手な絵やなあ」
と思って愛好していたものです。
貸本屋というのは大抵一週間か十日ほどで次の本と取り替えにくるものですが、その貸本屋はいたってのん気で、一度に二、三十冊持って来るのですが、一ヵ月経っても三ヵ月しても取りに来ません。
四ヵ月目に来たかと思うと、新しい本をもって来て、
「この本は面白いえ」
と言って置いてゆき、前の本を持って帰るのを忘れるという気楽とんぼでした。
廻りに来るのは、そこの本屋の息子ですが、浄瑠璃に大へん凝って、しまいには仕事をほり出して、そればかりうなっている仕末でした。
息子の呑気さに輪をかけたように、その貸本屋の老夫婦ものんびりとしたいい人達でした。