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あめんちあ

あめんちあ

富ノ沢 麟太郎

「改造」1911(明治44)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,594 字 · 83 页

青空文庫

しかしおれは絶望はしていない。

おれはおれ自身で取りおとした自分の魂を新らしく探そうと彷徨うているのかも知れない。

そしてそれに違いない。

」彼は決定的に寧ろ言い含めるのであった。

「それに違いはない。

おれは産前のありとあらゆる精力を尽したかのように、何ものかを切望していた。

それには先ず手近いところからと思って、いまさら言うまでもなく、一人の母親を、あの田舎のくすぶった他人の家に瞼をこすりながらやっと生きている……一人の法外もない馬鹿な子を夢にみている母親を……裏切られたとは感じながら、未だに彼女の子を胸のなかに描いている母親を……」と、彼は囁きつづけて、はたと言い淀んだ。

「それはおれだ!」

「それはおれの母親だ!」

そうして彼はいまさらのようにびっくりしてしまった。

今のいままで彼は彼自身ではない他の人のことを夢に見ていたかのようにさえ感じていたそのことが、彼自身のものであると思えば、寧ろ奇妙な気持になった。

彼は想像の発明に耽っていた訳ではないが、自分ながら己のうかつなのんき者にはあきれてしまった。

こう気づけば、彼はその不真面目な、鉛製の玩具のような彼自身が、更に形而下のものに思えた。