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あめんちあ
あめんちあ
富ノ沢 麟太郎
「改造」1911(明治44)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,594 字 · 83 页
彼は再び下宿生活をはじめた。
新鮮な感興は湧かなかった。
彼は日夜巻煙草を楽んだ――彼の手の指の内側は、黄褐色の脂で爛れてしまった――指の爪は、宝石ででもあるかのようにセピア色に輝きはじめた。
そうして彼の胃は、彼を憎み嫌うかのように自ら損じはじめた。
―――――
「おれはおれの躯を愛しそこねた……何もかも最後に近づいた……悪口の矢をたてられ……誹謗の疵痕……悪感情の悪戯……侮辱と意地悪……譏誚……嘲笑と挑戦……嫉妬?……嫉妬!……復讐……おれはおれの躯を愛しそこなった……」
彼が自分へ向って呟く小言は、日に日に同じことを幾回でも繰返すようになった。
ただ口に言うより外の言葉は知らない小児ででもあるかの様に――
―――――
*
「きょうはやめる。
」
「どうしてですか。
」
「それでは……君の言いなりでは、物の道理に合わない……」
彼は言い切った。
ものの二時間も費して、さんざんに取散らかした書籍をかたづけようともせずに、古本屋の主人は帰った。
彼はきょう古本屋の主人を呼び、書籍全部を売却する考えであった。
そうして彼はその金で何処へか旅行するつもりであった。