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あられささ

あられ笹

宮本 百合子

「女靴の跡」高島屋出版部、1948(昭和23)年2月発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,788 字 · 8 页

青空文庫

眺めていると、きよらかな海際の社頭の松風のあいだに、どこやら微かに人声も聴えて来るという思いがする。物蔭の小高いところから、そちらを見下すと、そこには隈なく陽が照るなかに、優美な装束の人たちが、恭々しいうちにも賑やかでうちとけた供まわりを随えて、静かにざわめいている。

黒い装束の主人たる人物は、おもむろに車の方へ進んでいる。が、まだ牛は轅につけられていない。華やかな人間の行事にも無関心な動物の自然さで、白と黒との立派な斑牛はのんびり鼻面をもたげ主人にそびらを向け、生きていることが気持よいという風に汀に向って水を飲んでいる。

視角の高い画面の構成は、全体が闊達で、自在なこころの動きがただよっている。自然の様式化と、人物の、言葉すくない、然し実に躍動している配置とは旋律的な調和を保っている。ここには、自然の好きな人間の感覚それにもまして人間の生活、種々様々な人間の動きということが面白くて、気にも入って観ている人間の観かた、入りこみが流露しているのである。

しかも宗達は、こんなに柔軟で清新な芸術の世界で、いかにも微笑まれる技術の上の手品を演じている。