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あるニュー・フェイスへのてがみ

あるニュウ・フェイスへの手紙

岸田 国士

「演劇 第一巻第一号~第七号」1951(昭和26)年6月1日~12月1日、「演劇 第二巻第一号~第二号」1952(昭和27)年1月1日~2月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,146 字 · 96 页

青空文庫

しかし、彼等の多くは、演説をさせるとよくわかるのですが、いずれもといっていいくらい、なかなか、われわれの標準からすると、雄弁家ぞろいです。そういう教養は、やはり、知らず知らず「書かれる文章」のなかにも、程度の差こそあれ、多少はうかがえるというものです。

そこへいくと、戯曲というジャンルは、それほど潔癖に「雄弁」を排撃する必要はなかったようです。なるほど、一時、自然主義運動の余波をうけて、「自然なセリフ」を尊重した時代もありますが、それこそフランス人でなくっても、彼等ヨーロッパ人の日常会話は、そもそも、伝統的に雄弁の流れを汲んでいるわけですから、どう考えても、われわれの感覚からすれば、自然な会話、すなわち、雄弁そのもののように受けとれるのです。

哲学者アランが「雄弁」について論じているのを読むと、その本質は、そのまま、劇の文体にあてはまるように思われ、僕は、これは困ったことだと、思いました。

なぜなら、われわれの文学の伝統のなかに、エロカンスの要素は、はっきりと区別されてはいないし、さらに、今日、俗に「雄弁術」などと言われるものは、かの政壇演説に類する奇怪な身振り、音声、表情をもってする絶叫にすぎないからです。