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あるかいそうから
ある回想から
宮本 百合子
「日本評論」1946(昭和21)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,899 字 · 14 页
私の用事は、前に中野さんと某氏を訪ねたとおなじ題目であった。文芸家協会は、大正年代に組織され、古い歴史をもつ日本で唯一の文学者の集団である。理事というところには、日本の代表的著述家・作家が顔をならべている。これらの人々の顔ぶれの世俗的に賑やかな体面上からも、日本の文学が瀕している危機にたいして黙っていられないはずであろうと思えた。こちらからの話があれば、文芸家協会の議題にのぼることなのだろうか。
光線のたりないその事務室で、正直な某氏は、苦渋の面持ちであった。
「それは、もう当然、問題にするべきなんです。しかし……今の理事は――」
「どなたから提案なさるということも不可能なんでしょうか」
「率直にいって麻痺していますからね、どの点からも――。想像もしていないでしょう」
「しかたがないというわけかしら」
某氏は苦痛な眼つきでしばらく沈黙していた。
「――どうも。だいたい、自分に関係のあることだと感じていないんだから、しまつがわるいです」
こういうことがあってしばらくして、文芸家協会は改組した。ばからしい、いかめしい官僚組織になって、文学報国会となった。評論家協会は、言論報国会となった。