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あるたんていじけん
ある探偵事件
寺田 寅彦
「大阪毎日新聞」1934(昭和9)年2月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,817 字 · 4 页
そんなことを考えさせられるのであった。
近ごろ、某大官が、十年前に、六百年昔の逆賊を弁護したことがあったために、現職を辞するのやむなきに立ち至ったという事件が新聞紙上を賑わした。なるほど、十年前の甲某が今日の甲某と同一人だということについては確実な証人が無数にある。従ってこの問題と上述の「猫の場合」とは全然何の関係もない別種類の事柄である。何の関係もないことであるにもかかわらず、ふとした錯覚で何かしら関係があるような気がしたのは、たしかに自分の頭の迷誤である。それで、これも不思議な錯覚の一例として後日の参考のためについでに書添えておくこととする。
(昭和九年二月『大阪毎日新聞』)