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いちょうのは

いちょうの葉

小川 未明

「台湾日日新報」1935(昭和10)年10月10日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,722 字 · 4 页

青空文庫

お寺の前を通ると、大きないちょうの木の葉が黄色に色づいて、風の吹くたびにひらひらと舞って落ちてきました。清ちゃんは、一人で門から入って、落ちている美しい葉を拾いますと、それにまじって、いちょうの実も落ちていました。

「あ、これも拾っていって、幸ちゃんにあげよう。」と、いって、清ちゃんは、拾いました。そして、お家へ帰ると、さっそく、幸ちゃんのところへ持ってゆきました。これを見て、幸ちゃんは、どんなに喜んだでありましょう。

「僕、お薬を飲んだら、熱が下がったのだよ。明日から、また、学校へいっしょにゆこうね。」といいました。

「そうしたら、また、帰りにお寺の中へ入ってみようよ。」と、清ちゃんは、いって、二人で、いちょうの実や、それから、裏の林の中に入ってくりの実を拾ったらどんなにおもしろかろうと考えたのです。

「風が吹かないから、明日は、落ちていないかもしれない。」と、幸ちゃんがいいました。

「風が吹かなくても、落ちているよ。」と、清ちゃんは、このごろ、木の実がよく熟して、ひとりでに落ちるのを知っていました。それに、あの村はずれのお寺は、荒れはててだれも境内を掃くものがなければ、一日じゅう、御堂の戸が閉まっていることを思ったのでありました。