轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いのちのしょや
いのちの初夜
北条 民雄
北条民雄『いのちの初夜』。同一底本的分册已合并为一书。收入:いのちの初夜、眼帯記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,366 字 · 63 页
そしてぎろりと眼をむいた。恐ろしい眼だ。義眼よりも恐ろしいと尾田は思う。逃げようと身構えるがもう遅い。さっと佐柄木が樹上から飛びついて来た。巨人佐柄木に易々と小腋に抱えられてしまったのだ。手を振り足を振るが巨人は知らん顔をしている。
「さあ火炙りだ」
と歩き出す。すぐ眼前に物凄い火柱が立っているのだ。炎々たる焔の渦がごおうっと音をたてている。あの火の中へ投げ込まれる。身も世もあらぬ思いでもがく。が及ばない。どうしよう、どうしよう、灼熱した風が吹いて来て貌を撫でる。全身にだらだらと冷汗が流れ出る。佐柄木はゆったりと火柱に進んで行く。投げられまいと佐柄木の胴体にしがみつく。佐柄木は身構えて調子をとり、ゆさりゆさりと揺すぶる。体がゆらいで火炎に近づくたびに焼けた空気が貌を撫でるのだ。尾田は必死で叫ぶのだ。
「ころされるう。こ ろ さ れ る う。他人にころされるう――」
血の出るような声を搾り出すと、夢の中の尾田の声が、ベッドの上の尾田の耳へはっきり聞こえた。奇妙な瞬間だった。
「ああ夢だった」
全身に冷たい汗をぐっしょりかいて、胸の鼓動が激しかった。他人にころされるうーと叫んだ声がまだ耳殻にこびりついていた。