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いわゆるしぜんのびとしぜんのあい
いわゆる自然の美と自然の愛
丘 浅次郎
「時代思潮」1905(明治38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,029 字 · 16 页
人間に利害損益の関係のない範囲において自然物を優待するのは高尚な慰めとしてはなはだ結構であるが、ただありのままを述べれば以上のとおりであるゆえ、強いてこれをもって博物学教授の一目的とするには足らぬというのみである。
以上述べたごとくわれらの考えでは、博物学を授けて、生徒をして自然の美を感服せしめ自然物を愛する情を起さしめるということは必要でもなければまたできることでもない。博物学の倫理的価値はけっしてかかることを人工的に生徒に説き込むのではなく、生徒をして虚心平気に人類と自然とを観察するの習慣を得しめて、人類と自然とのありのままを知らしめる点にあるが、その倫理的効力の大なることはわずかに自然の美を感じ、一部の自然物を愛するごときと同日の論ではない。およそ人間に関することを論ずるにはまず人間を知ることが必要であるゆえ、自然における人類の位置を知るはすべての倫理的思想の根本であるが、これを知るにはまず自然のありのままと人間のありのままとを知らねばならぬ。しかしてこれを教えるのが博物学である。されば博物学と倫理学との関係ははなはだ親密であるべきはずで、けっして従来のごとくほとんど相知らずに離れているべきものではない。